ユミソンは、2016年1月にベクソン・アーツ・京都を立ち上げました。
京都の施設は、庭や縁側、床の間などがある伝統的な和風建築の居住空間として戦争が始まる前年の1938年に建てられました。床の間は南北朝時代に起源をもち、客室の一角を占める掛け軸や花など鑑賞のための場所として、近世に現在の様式となりました。床柱は皮のついた桜、使われている木材はすべて種類の違うものとなっています。縁側からは和風庭園が望め、四季折々の美しさを堪能できます。
そして、この施設が位置するのは、京都市南区。空海の開いた東寺がある有名な地域である一方、1945年の終戦の解放により在日朝鮮人が急激に流入し、集落を形成した地域です。特に東九条という地域は、地方から職を求める人、被差別部落の人、障害者も多く住み、地域全体が被差別地域となっていきました。高度成長期以降は人口が減り、現在は高齢者の街。近年、京都市は京都駅の南側の再開発に着手を始め、大きなショッピングモール、大学の移動などが行われるようになりました。
このような歴史の流れとともに印象が大きく変化した街にベクソン・アーツ・京都はあります。私は人々の中にある、時として気がつかない違和感を丹念にすくい上げていき、様々な人々が語り合える芸術のひとつの場所が作れたらと考えています。
最後に、この施設の名前となっているベクソン・アーツ・京都の説明をしたいと思います。韓国は夫婦別姓ですが、子どもは父の名前を受け継ぎます。私は母と父から生まれたので、母の姓Baekと父の姓Songを合わせたBaexongをこの施設の名前にしました。ベクソンは、父や母でありそのどちらでもありません。もちろん私は家族を愛しています。そうであるからこそジェンダーや制度への問いかけもこの施設を通して行おうと思います。
2018年からは東京の神楽坂と上池袋にもオフィスを立ち上げました。Baexong Artsでの活動はキュレーションや作品制作、教育的な立場など様々ですが、その全部からはみ出した活動でもあります。そのはみ出した活動を法人化することで社会化し、社会彫刻としての視座を与えてみようと、現在法人化への準備を進めています。